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LOT 89
香月 泰男〈1911-1974〉
シベリヤ
8.8×10.8cm
板・油彩・額装
左下にサイン・裏面に署名、タイトル
香月泰男鑑定登録会鑑定証書付
解説を読む
¥
2000000
-
4000000
LOT 89
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香月 泰男〈1911-1974〉
シベリヤ
8.8×10.8cm
板・油彩・額装
左下にサイン・裏面に署名、タイトル
香月泰男鑑定登録会鑑定証書付
¥
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-
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太平洋戦争の終戦後、シベリア抑留という壮絶な体験を経た香月泰男は、山口県三隅町(現・長門市)へ復員した後にその過酷な記憶と深く対峙し続け、近代日本洋画史に不滅の足跡を残す「シベリア・シリーズ」を結実させた。戦後美術の金字塔と評される同シリーズの多くは山口県立美術館に所蔵され、人間の尊厳と生の深淵を問い直す記念碑的作品群として今日まで高く評価されている。
わずか8.8×10.8センチメートルという、手のひらに収まるほど極小の画面でありながら、本作「シベリヤ」には香月芸術の精髄が濃密に凝縮されている。画面は大きく左右の領域に分けられ、右側の暗く狭隘な開口部には、「シベリア・シリーズ」の名品、「涅槃」や「北へ西へ」を思わせる、防寒帽をかぶり静寂の中に佇む人物の頭部が描かれている。漆黒の陰影の中に沈潜するその表情は、極寒の地で極限状態に置かれた抑留者自身の沈黙の姿であり、同時に香月が生涯にわたり描き続けた名もなき人間の象徴とも解釈できよう。
一方、画面左側の灰褐色を帯びた背景には、旧ソビエト連邦の象徴である鎌と槌の意匠や、白く光を放つように散開する星々のモティーフが配され、画面左下にはキリル文字を意識した「Я. KAZUKI」という独特の署名が刻まれている。木炭や方解石などを混入した特有の下地処理から生まれる重厚なマチエールと、画家の代名詞である深遠な黒の色彩は、画面に圧倒的な質量と密度を与えている。小サイズでありながら、大作にも比肩する強烈な造形力と切実な気迫をみなぎらせている点は特筆に値するであろう。