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LOT 246
Marc Chagall (マルク・シャガール)〈1887-1985〉
Rencontre Hivernale au Croissant de Lune
35.1×26.6cm
紙・グアッシュ・ペン・インク・額装
右下にスタンプサイン・裏面に書き込み「D2389e」
1973年頃
Comité Marc Chagall 鑑定証書付
解説を読む
¥
7000000
-
12000000
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LOT 246
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Marc Chagall (マルク・シャガール)〈1887-1985〉
Rencontre Hivernale au Croissant de Lune
35.1×26.6cm
紙・グアッシュ・ペン・インク・額装
右下にスタンプサイン・裏面に書き込み「D2389e」
1973年頃
Comité Marc Chagall 鑑定証書付
¥
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本作は、画家の長いキャリアの後半期において、自身の芸術的源泉と精神的な故郷への思慕が、極めて軽妙かつ詩的な筆致で統合された小気味よい佳品である。画面全体に広がるリズミカルなインクの線と、優美に滲むブルーのグアッシュは、シャガールが終生追い求め続けた「愛と郷愁の二重奏」を、冬の夜の静謐な空気感とともに描き出している。
作品を見て最も目を引くのは、画面の左側に配置された帽子をかぶった男性と、その足元に佇む動物、そして画面上部を水平に飛行する女性の姿である。シャガールの絵画において、空を飛ぶ恋人たちのモチーフは、現実の苦難や制約を超越した純粋な愛の象徴として繰り返し登場する。ここで描かれる女性は、うねるような髪と衣服のひだをインクの細微な線で表現され、まるで夢の世界から滑り込んできたかのように軽やかに宙を舞っている。彼女の手は男性の頭部へと差し伸べられており、この「出会い(Rencontre)」が時空を超えた精神的な邂逅であることを暗示する。男性の表情は静かで、どこか内省的な眼差しを画面の外へと向けており、その穏やかな佇まいは、激動の20世紀を生き抜いたシャガール自身の分身のようでもある。
男性が寄り添う青い動物は、一見すると山羊あるいは羊のようであり、その胴体付近には小さな鶏が描き込まれている。山羊や羊は、ユダヤの伝統において「犠牲の羊(スケープゴート)」としての歴史的な受難を象徴すると同時に、神への捧げ物、あるいは一族を養う無垢な生命の象徴として深い意味を持ち、山羊の胴体に描かれた鶏もまた、ユダヤ教の伝統行事「カパロット(贖罪の儀式)」に関連する重要なモチーフであり、生命の身代わりや新たな夜明け、精神的な目覚めを象徴する生き物として、シャガールの図像学において確固たる地位を占めている。
背景に視線を移すと、画面中央から右側にかけて、シャガールの故郷であるヴィテプスクの街並みが描かれている。タイトルにある「Hivernale(冬の)」という言葉が示すように、画面全体に散りばめられたスポットは、しんしんと降る雪のようでもあり、あるいは夜空にきらめく星々の反映のようでもある。さらに、画面左上には黒々とした「三日月(Croissant de Lune)」が浮かび、その傍らを鳥たちが飛び交っている。
ブルーのグアッシュは、あらかじめ描かれたインクの輪郭線に従うことなく、独立した色面として自由に画面を満たしており、形態と色彩の解放という、シャガールがモダンアートの旗手として到達した革新的な表現様式が、この小画面の中にも遺憾なく発揮されている。
参照されるべき関連作品として、ニースのマルク・シャガール聖書のメッセージ国立美術館に所蔵される一連の大型連作や、パリのオペラ座の天井画などが挙げられるが、それらの記念碑的な大作が公的なメッセージや壮大な神話を紡いでいるのに対し、本作のようなプライベートな規模の紙作品は、画家の最も内省的で純粋な詩情がダイレクトに投影されている点において、独自の美術史的価値を有している。大画面の制作の合間に、アトリエで机に向かい、自らの記憶の引き出しをそっと開けるようにして描かれた本作は、シャガールという人間の呼吸や、筆を動かす手元の温度感までもが現代の私たちに伝わってくるかのような臨場感に満ちているといえよう。