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LOT 237
梅原 龍三郎〈1888-1986〉
殘月 カンヌ風景
46.0×55.3cm
キャンバス・油彩・額装
右下にサイン
1964-1965年
共箱・東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
[literature]
『梅原龍三郎 : 1964-1965 Cannes,Paris,Versailles』掲載 (求龍堂:1965年)
解説を読む
¥
5000000
-
10000000
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梅原 龍三郎〈1888-1986〉
殘月 カンヌ風景
46.0×55.3cm
キャンバス・油彩・額装
右下にサイン
1964-1965年
共箱・東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
[literature]
『梅原龍三郎 : 1964-1965 Cannes,Paris,Versailles』掲載 (求龍堂:1965年)
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梅原龍三郎は1964年初夏に、自身7度目となるヨーロッパ外遊に向かい、9月から翌年まで南仏・カンヌで制作に励んだ。およそ10カ月の滞仏で50点を超える作品を描いており、喜寿を迎える老画家とは思えないほどの旺盛な創作意欲を見せる。そしてそれらの作品をまとめたのが、今回出品作も掲載されている画集『梅原龍三郎 : 1964-1965 Cannes, Paris, Versailles』で、いずれの作品ものびのびとして力強い筆さばきと豊かな色彩のハーモニーが画面を彩り、フランス各地の美しい風景への感動とそれを描く喜びを率直に伝えている。
とくに、今回出品作も含むカンヌ風景が上記の画集の冒頭を飾るように、彼の地は画家が心から愛した土地であった。
そのきっかけは1920年、印象派の巨匠で梅原の師匠でもあったルノワールの弔問のためにフランスに渡った際、パリの寒さを逃れて暖かいカンヌに向かった時である。当時の梅原は、師匠の死で傷心であっただけでなく、西洋の単なる模倣ではない日本人としての新たな油絵の創造を模索してスランプに陥っていた。しかし、風光明媚なカンヌにすっかり魅了されると、日本での苦闘が嘘のように明るくのびやかな風景画を描き、ここから画業の進展がはじまる。帰国後には、梅原は日本の伝統美術の表現を油絵に取り入れながら、カンヌで見せた生来の絢爛な色彩と豪放な筆触が織りなす、東西の美を融合した華麗な画風を生みだし、日本洋画史に刻まれる金字塔をうちたてた。
その後、東京美術学校教授の歴任や文化勲章の受章など、画壇の重鎮として活躍した梅原だったが、60代半ばを過ぎると画壇の主導的立場を退く。代わりに、重責から解放されたのを機にヨーロッパへの長期旅行をくりかえし、その度にカンヌに滞在して自由な創作に没頭した。
カンヌは、気候や風土が画家の気質に合うだけでなく、その美しい空を描き切った画家はいない、今度行った時には何とかものにしたいという、梅原の意欲をかきたてる、朝から晩まで描いても尽きることのない魅力をもつ存在だったのである。
今回出品作は、「残月」すなわち明け方まで空に残る月と、夜明けのカンヌの海岸を描く。薄藍の夜空に淡い月が浮かぶ一方、山際の空を朝焼けが染めはじめ、複雑で神秘的なグラデーションを鮮やかに描き出す。加えて、明るくなりゆく街中のオレンジ色の屋根、青い海、南国の木々の緑と、豊かな色彩の世界は梅原だからこそ表現といえよう。そして、月と暁光が競演するわずかな時間に素早く描きとめ、おおらかな筆致で早朝の爽やかな空気を見事に表し、気負いのない自由な画境を見せている。
梅原は本作のように明け方から絵筆をにぎり、昼、夕方と刻々と変化する南仏の太陽と地中海の煌めきをキャンバスに表した。本作に流れる明朗な気配は、美しい風景を見て描ける素晴らしい1日のはじまりに向けて、清新な気持ちで挑もうとする画家の心情を感じさせるだろう。本作は明け方のカンヌの美しさと、華麗で闊達な画風を表すだけでなく、生き生きと創作に向かう画家の眼差しそのものが投影されているのである。