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LOT 68
Marc Chagall (マルク・シャガール)〈1887-1985〉
Famille au Village
76.5×57.2cm
紙・インク・額装
右下にサイン
1981年
COMITÉ MARC CHAGALL 鑑定証書付
今回出品作《Famille au Village》は1981年、シャガール94歳の頃の作品である。最晩年ともいえる頃の制作であるが、筆さばきは伸びやかで、こまごまとしたモチーフをひとつひとつ縁取り、描かれる人々には笑みが浮かび、高齢となっても画家の創造性は衰えないことがうかがえる。
老境に向かうほどに、シャガールの創作には自然と「生きる悦び」が花開き、ほとんど無意識的なオートマティスムに線と形が生み出され、生命と愛の主題を詩情豊かにうたいあげる、比類のない美の世界を創りだした。
そして本作も、画家おなじみのモチーフにあふれており、画家の心のなかで培われた豊かなイメージを伝えてくれる1作である。
本作のタイトルは「村の家族」という意味であるが、画面に描かれる村は実在のものではなく画家が夢想する楽園で、家族というのも描かれた人々だけでなく、動物たちも含めたすべての生命をひとつの家族としているといえよう。そしてそこでは、画家の記憶が原風景となった、彼の全宇宙が凝縮された空間が繰り広げられている。
シャガールは帝政ロシアの古都・ヴィテブスクのユダヤ人居留区で生まれ、その心には家族や同胞と過ごす素朴な日常や、伝統的な祝祭、民族の宗教と歴史が深くしみこんだ。そして最愛の妻との出会い、パリで過ごした青春時代も創造の源泉となる一方で、戦争や騒乱、それによって引き起こされた多くの不幸が画家の心に影を落とす。それでもシャガールは自らの芸術とともにそれらを乗り越えていったのであり、画家の記憶から生まれたモチーフたちは彼を喜ばし、慰め、勇気づけてくれる愛すべき存在として画面を彩った。
本作でも、村という存在は故郷であるヴィテブスクを想起させ、人々を村というひとつの家に暮らす家族と見るのも、ユダヤ人共同体で育った画家の生い立ちを思い起こさせる。そしてロバや鶏も人間と同じ大きさで描くのは、シャガールの故郷の人々が信じたハシディスム(あらゆる存在物の魂に神の恩寵と愛が届き、すべては同等なものとする信仰)の影響も見え、彼らも大切な家族なのだという画家の博愛がこめられているだろう。
ほかにも、寄り添う恋人たちは愛の象徴であり、宙を飛ぶ人は画家が夢中になったサーカスのアクロバットに通じるなど、画家の琴線に触れたものを探し当てるのもおもしろい。
そのなかで注目したいのが、画面右側に描かれる、胸に磔刑のキリスト像を表した女性である。シャガールはユダヤ教徒であったが、若い頃から聖母子像などキリスト教由来のモチーフも描いていて、晩年にはキリスト教の大聖堂のステンドグラス制作を担った。本作では、聖母マリアのような女性は、帽子をかぶる敬虔なユダヤ教徒の男性と向かい合い、彼らは楽園の象徴である生命の木の下、腕を差し伸べながら対談する。そこには、宗教の枠を越え、互いを理解し尊重する、人間の普遍的な愛と平和が実現されており、生命の木の幹に表された人類の始祖アダムの前で起きたこの奇跡に、村の家族は視線を向けて微笑み、夜空の恋人たちは静かに見守っているのである。
本作は、シャガールの豊かな創造性と、激動の時代を生きたからこそたどり着いた人間の愛と調和の願いがこめられた、20世紀を代表する巨匠の魅力を伝える1作である。
¥
7000000
-
12000000
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Marc Chagall (マルク・シャガール)〈1887-1985〉
Famille au Village
76.5×57.2cm
紙・インク・額装
右下にサイン
1981年
COMITÉ MARC CHAGALL 鑑定証書付
今回出品作《Famille au Village》は1981年、シャガール94歳の頃の作品である。最晩年ともいえる頃の制作であるが、筆さばきは伸びやかで、こまごまとしたモチーフをひとつひとつ縁取り、描かれる人々には笑みが浮かび、高齢となっても画家の創造性は衰えないことがうかがえる。
老境に向かうほどに、シャガールの創作には自然と「生きる悦び」が花開き、ほとんど無意識的なオートマティスムに線と形が生み出され、生命と愛の主題を詩情豊かにうたいあげる、比類のない美の世界を創りだした。
そして本作も、画家おなじみのモチーフにあふれており、画家の心のなかで培われた豊かなイメージを伝えてくれる1作である。
本作のタイトルは「村の家族」という意味であるが、画面に描かれる村は実在のものではなく画家が夢想する楽園で、家族というのも描かれた人々だけでなく、動物たちも含めたすべての生命をひとつの家族としているといえよう。そしてそこでは、画家の記憶が原風景となった、彼の全宇宙が凝縮された空間が繰り広げられている。
シャガールは帝政ロシアの古都・ヴィテブスクのユダヤ人居留区で生まれ、その心には家族や同胞と過ごす素朴な日常や、伝統的な祝祭、民族の宗教と歴史が深くしみこんだ。そして最愛の妻との出会い、パリで過ごした青春時代も創造の源泉となる一方で、戦争や騒乱、それによって引き起こされた多くの不幸が画家の心に影を落とす。それでもシャガールは自らの芸術とともにそれらを乗り越えていったのであり、画家の記憶から生まれたモチーフたちは彼を喜ばし、慰め、勇気づけてくれる愛すべき存在として画面を彩った。
本作でも、村という存在は故郷であるヴィテブスクを想起させ、人々を村というひとつの家に暮らす家族と見るのも、ユダヤ人共同体で育った画家の生い立ちを思い起こさせる。そしてロバや鶏も人間と同じ大きさで描くのは、シャガールの故郷の人々が信じたハシディスム(あらゆる存在物の魂に神の恩寵と愛が届き、すべては同等なものとする信仰)の影響も見え、彼らも大切な家族なのだという画家の博愛がこめられているだろう。
ほかにも、寄り添う恋人たちは愛の象徴であり、宙を飛ぶ人は画家が夢中になったサーカスのアクロバットに通じるなど、画家の琴線に触れたものを探し当てるのもおもしろい。
そのなかで注目したいのが、画面右側に描かれる、胸に磔刑のキリスト像を表した女性である。シャガールはユダヤ教徒であったが、若い頃から聖母子像などキリスト教由来のモチーフも描いていて、晩年にはキリスト教の大聖堂のステンドグラス制作を担った。本作では、聖母マリアのような女性は、帽子をかぶる敬虔なユダヤ教徒の男性と向かい合い、彼らは楽園の象徴である生命の木の下、腕を差し伸べながら対談する。そこには、宗教の枠を越え、互いを理解し尊重する、人間の普遍的な愛と平和が実現されており、生命の木の幹に表された人類の始祖アダムの前で起きたこの奇跡に、村の家族は視線を向けて微笑み、夜空の恋人たちは静かに見守っているのである。
本作は、シャガールの豊かな創造性と、激動の時代を生きたからこそたどり着いた人間の愛と調和の願いがこめられた、20世紀を代表する巨匠の魅力を伝える1作である。
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