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LOT 59
鴨居 玲〈1928-1985〉
教会
60.6×72.8cm
キャンバス・油彩・額装
左下にサイン・裏面に署名、タイトル、年記
1973年
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
[exhibition]
『いのち・生きる・愛 鴨居玲展』cat.51 (大阪市立美術館:1991年), 『没後10周年記念 鴨居玲展』cat.45 (ひろしま美術館:1995年), 『没後15年 一期は夢よ 鴨居玲展』cat.40 (石川県立美術館:2000年),
[literature]
『鴨居玲画集』P212, No.223 掲載(日動出版部:2000年)
鴨居玲は、人間や社会の闇に迫る描写を通して「人間とはなにか」を見つめ続け、絵画にこめられた内なる叫びは多くの人の心を揺さぶった。元来、人間好きな鴨居は「人間の心における暗い面、弱い面といったところに興味をひかれて」絵を描いていったが、そんな画家にとって今回出品作に描かれる教会は、人間以外をテーマとした唯一のシリーズである。
暗闇のような陰鬱な画面のなか、屋根に掲げる十字架以外は、すべての装飾が省かれた立方体のような教会が表わされる。さらに、それは地面にめりこむように傾いていて、明らかに異様で不穏な空気をかもしだす。
本作が描かれた1973年と言えば、《私の村の酔っ払い》や《夢候よ》など、スペインの小村バルデペーニャス滞在で生まれた、傑作ぞろいの黄金期にあたる。同年に開催された個展ではこれらの名品とともに、今回出品作とほぼ同構図で一回り大きい50号の作品も出品されており、本作のイメージは画家の心に強く残るものであったと想像できよう。
鴨居が教会の絵を描き始めたのは1969年あたりからで、この年は《静止した刻》で第12回安井賞を受賞したことで本格的な画壇デビューを果たした年でもあった。それまで鴨居は描くべきモチーフと表現を模索して、フランスや南米、イタリアなども放浪しており、キリスト教文化圏の各地を訪れたことも、教会を描くきっかけとなった。
また、1977年のインタビューにて、画家自身が教会の絵について語っている。
「この作品を描くきっかけとなったのは、非常にキリスト教の影響が強い国にいて、何故自分は無宗教であるか、という問いかけ、それが最初です。「神」を持ってる人は楽だし、幸福ですが、持ってない人間は、というと自分しか頼るものはない。そこから「神」とは存在するのだろうかという問いかけが生まれてくる。フランスでは、さがしたけれど、いなかったという答えがかえってきただけです」
信仰に対する問いは、1971年にスペインで暮らしてからも抱え続けていた。そしてそれが仕事の根本になっているのかもしれない、と鴨居は述懐しており、そういった自問自答のくりかえしが度重なる教会の制作につながっていたのだろう。
初期の作品では、教会の細部や背景も描かれていたが、次第にそれらはとりのぞかれてゆく。さらに、当初は地に足を着けて建っていたのが、段々と地盤沈下のように傾いていき、後年になると底が見えるほどにひっくり返ったり、逆に宙に浮かび上がったりと、その表現を少しずつ変化させていった。
この遷移は、信仰に対する画家の思考の深化にともなうものとも考えられる。人生の苦楽に結びつく教会は人の業を象徴し、人間を描くこととは異なるアプローチで、人間の本質に迫ろうとする画家の姿勢が感じられる。
鴨居の描く独特の世界観は、今なお多くの人の心をとらえてはなさず、すでに没後40年が経つが、いまだに節目節目に回顧展が開催される。変わることなく人気を博す理由には、画家が見つめようとしたもの、訴えかける思いが人々の共感を呼ぶからであろう。今回出品作からも、ぜひ画家の魅力を味わっていただきたい。
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8000000
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15000000
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LOT 59
鴨居 玲〈1928-1985〉
教会
60.6×72.8cm
キャンバス・油彩・額装
左下にサイン・裏面に署名、タイトル、年記
1973年
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
[exhibition]
『いのち・生きる・愛 鴨居玲展』cat.51 (大阪市立美術館:1991年), 『没後10周年記念 鴨居玲展』cat.45 (ひろしま美術館:1995年), 『没後15年 一期は夢よ 鴨居玲展』cat.40 (石川県立美術館:2000年),
[literature]
『鴨居玲画集』P212, No.223 掲載(日動出版部:2000年)
鴨居玲は、人間や社会の闇に迫る描写を通して「人間とはなにか」を見つめ続け、絵画にこめられた内なる叫びは多くの人の心を揺さぶった。元来、人間好きな鴨居は「人間の心における暗い面、弱い面といったところに興味をひかれて」絵を描いていったが、そんな画家にとって今回出品作に描かれる教会は、人間以外をテーマとした唯一のシリーズである。
暗闇のような陰鬱な画面のなか、屋根に掲げる十字架以外は、すべての装飾が省かれた立方体のような教会が表わされる。さらに、それは地面にめりこむように傾いていて、明らかに異様で不穏な空気をかもしだす。
本作が描かれた1973年と言えば、《私の村の酔っ払い》や《夢候よ》など、スペインの小村バルデペーニャス滞在で生まれた、傑作ぞろいの黄金期にあたる。同年に開催された個展ではこれらの名品とともに、今回出品作とほぼ同構図で一回り大きい50号の作品も出品されており、本作のイメージは画家の心に強く残るものであったと想像できよう。
鴨居が教会の絵を描き始めたのは1969年あたりからで、この年は《静止した刻》で第12回安井賞を受賞したことで本格的な画壇デビューを果たした年でもあった。それまで鴨居は描くべきモチーフと表現を模索して、フランスや南米、イタリアなども放浪しており、キリスト教文化圏の各地を訪れたことも、教会を描くきっかけとなった。
また、1977年のインタビューにて、画家自身が教会の絵について語っている。
「この作品を描くきっかけとなったのは、非常にキリスト教の影響が強い国にいて、何故自分は無宗教であるか、という問いかけ、それが最初です。「神」を持ってる人は楽だし、幸福ですが、持ってない人間は、というと自分しか頼るものはない。そこから「神」とは存在するのだろうかという問いかけが生まれてくる。フランスでは、さがしたけれど、いなかったという答えがかえってきただけです」
信仰に対する問いは、1971年にスペインで暮らしてからも抱え続けていた。そしてそれが仕事の根本になっているのかもしれない、と鴨居は述懐しており、そういった自問自答のくりかえしが度重なる教会の制作につながっていたのだろう。
初期の作品では、教会の細部や背景も描かれていたが、次第にそれらはとりのぞかれてゆく。さらに、当初は地に足を着けて建っていたのが、段々と地盤沈下のように傾いていき、後年になると底が見えるほどにひっくり返ったり、逆に宙に浮かび上がったりと、その表現を少しずつ変化させていった。
この遷移は、信仰に対する画家の思考の深化にともなうものとも考えられる。人生の苦楽に結びつく教会は人の業を象徴し、人間を描くこととは異なるアプローチで、人間の本質に迫ろうとする画家の姿勢が感じられる。
鴨居の描く独特の世界観は、今なお多くの人の心をとらえてはなさず、すでに没後40年が経つが、いまだに節目節目に回顧展が開催される。変わることなく人気を博す理由には、画家が見つめようとしたもの、訴えかける思いが人々の共感を呼ぶからであろう。今回出品作からも、ぜひ画家の魅力を味わっていただきたい。
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8000000
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15000000
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