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LOT 70
Léonard Foujita (藤田 嗣治)〈1886-1968〉
祈る母と娘
45.5×33.0cm
紙・水彩・額装
右下にサイン・裏面に印「藤田嗣治」
東京美術俱楽部鑑定委員会鑑定証書付
ヴェールを被り、祈りを捧げる母と娘。その横顔はルネサンス絵画を彷彿とさせる美しい輪郭を描き、まっすぐと前に向く眼差しからはその先に祈りの対象がいることを想像させ、ふたりの仕草は信仰に対する敬虔な姿を表す。
白いヴェールは淡い陰影によって白の背景から際立ち、肥痩のある黒線が衣服の立体感を表現し、画家の卓越した描写力をものがたる。なにより、極細の線でふちどられた横顔や手指のなめらかな造形は、パリ画壇で絶賛された画家・藤田嗣治ならではの描線の魅力を余すことなく伝える。
とくに、母親の後頭部から背中にかけての1本の線は、画家が集中して制作に向かい、ひと息で引いた緊張を感じさせ、それは母親の背を伸ばした真摯な姿勢とも重なる。
画家の息づかいとモチーフの心情が一体となる情感は、まさしく藤田が語った「……僕の希望は絵を描く前に、物体と自分とが一人になつて——直感で描いてゆく」を体現するだろう。
藤田独特の線描は、西洋画の本場たるフランスで日本人である自身がどうしたら認められるか苦悩するなかで再発見した、東洋画における線の表現に由来する。
「線とは、単に外郭を云ふのではなく、物体の核心から探求されるべきものである。美術家は物体を深く凝視し、的確の線を捉へなければならない。そのことが分るやうになるには、美の神髄を極めるだけの鍛錬を必要とする」
芸術の本質を上記のように悟り、東洋の「和やかな優婉、素朴、風雅、幽玄、繊細等の味」を油彩画のなかで表現した藤田は、日本人としての個性をパリで発揮した。本作からは、画家がたどり着いた線描の妙を深く味わうことができるであろう。
本作は右下のサインから推測するに、藤田が戦争を経てパリに戻った1950 年からカトリックの洗礼を受ける1959年のあいだに制作されたとみられる。
熱心な信仰心を表すかのように、藤田は洗礼前からキリスト教をテーマにした作品を数多く描くようになった。とくに、青衣をまといヴェールを被る聖母マリアや、幼子を腕に抱く聖母子像が多く、聖母たちの口元には慈愛に満ちた笑みが浮かぶ。
そして本作の母親もまた、聖母と同じく優しくほほ笑む。それは隣にいて、真剣にお祈りをする娘への愛情の表れであるだろうし、しかしそれだけではない余韻も感じさせる。
そう思わせる理由には、何も描かれていない白の背景、すなわち余白の存在を見逃すことはできない。
東洋画において、余白は無限の奥行や情緒を伝える重要な空間であり、藤田自身も「日本画の余白を有した清楚な気品」を称賛し、自己の絵画にも取り入れ、自身の繊細な心情を込めることに心を砕いた。
本作は、子どもへの愛情のみならず、神を信じる安らぎ、純粋な信仰の喜びがまじりあう、尽きることのない幸福が母の笑みとなり、その美しさに心打たれ共感する藤田の感情を余白が伝え、画家の万感の思いがこもった1作である。
¥
8000000
-
15000000
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Léonard Foujita (藤田 嗣治)〈1886-1968〉
祈る母と娘
45.5×33.0cm
紙・水彩・額装
右下にサイン・裏面に印「藤田嗣治」
東京美術俱楽部鑑定委員会鑑定証書付
ヴェールを被り、祈りを捧げる母と娘。その横顔はルネサンス絵画を彷彿とさせる美しい輪郭を描き、まっすぐと前に向く眼差しからはその先に祈りの対象がいることを想像させ、ふたりの仕草は信仰に対する敬虔な姿を表す。
白いヴェールは淡い陰影によって白の背景から際立ち、肥痩のある黒線が衣服の立体感を表現し、画家の卓越した描写力をものがたる。なにより、極細の線でふちどられた横顔や手指のなめらかな造形は、パリ画壇で絶賛された画家・藤田嗣治ならではの描線の魅力を余すことなく伝える。
とくに、母親の後頭部から背中にかけての1本の線は、画家が集中して制作に向かい、ひと息で引いた緊張を感じさせ、それは母親の背を伸ばした真摯な姿勢とも重なる。
画家の息づかいとモチーフの心情が一体となる情感は、まさしく藤田が語った「……僕の希望は絵を描く前に、物体と自分とが一人になつて——直感で描いてゆく」を体現するだろう。
藤田独特の線描は、西洋画の本場たるフランスで日本人である自身がどうしたら認められるか苦悩するなかで再発見した、東洋画における線の表現に由来する。
「線とは、単に外郭を云ふのではなく、物体の核心から探求されるべきものである。美術家は物体を深く凝視し、的確の線を捉へなければならない。そのことが分るやうになるには、美の神髄を極めるだけの鍛錬を必要とする」
芸術の本質を上記のように悟り、東洋の「和やかな優婉、素朴、風雅、幽玄、繊細等の味」を油彩画のなかで表現した藤田は、日本人としての個性をパリで発揮した。本作からは、画家がたどり着いた線描の妙を深く味わうことができるであろう。
本作は右下のサインから推測するに、藤田が戦争を経てパリに戻った1950 年からカトリックの洗礼を受ける1959年のあいだに制作されたとみられる。
熱心な信仰心を表すかのように、藤田は洗礼前からキリスト教をテーマにした作品を数多く描くようになった。とくに、青衣をまといヴェールを被る聖母マリアや、幼子を腕に抱く聖母子像が多く、聖母たちの口元には慈愛に満ちた笑みが浮かぶ。
そして本作の母親もまた、聖母と同じく優しくほほ笑む。それは隣にいて、真剣にお祈りをする娘への愛情の表れであるだろうし、しかしそれだけではない余韻も感じさせる。
そう思わせる理由には、何も描かれていない白の背景、すなわち余白の存在を見逃すことはできない。
東洋画において、余白は無限の奥行や情緒を伝える重要な空間であり、藤田自身も「日本画の余白を有した清楚な気品」を称賛し、自己の絵画にも取り入れ、自身の繊細な心情を込めることに心を砕いた。
本作は、子どもへの愛情のみならず、神を信じる安らぎ、純粋な信仰の喜びがまじりあう、尽きることのない幸福が母の笑みとなり、その美しさに心打たれ共感する藤田の感情を余白が伝え、画家の万感の思いがこもった1作である。
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8000000
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